私が子供の頃、祖父が経営していたレストランに「ハチの剥製」を飾っていました。毎朝、祖父はハチの傍らで大好きなコーヒーを飲むのが日課でした。お客さんや当時お元気だった戦友の方々とハチの話や戦地での出来事を時が経つのも忘れて熱心に話をしていた姿が昨日の事のように思い出されます。

 祖父はよく、「ハチとはお互いが命の恩人だった」と語っていました。部隊にとって「ハチ」は厳しい戦地での心の安らぎ、救いでした。祖父がマラリアに罹り、苦しんでいる時には身体中を舐めて痛みを和らげ、枕元で看病までしてくれたそうです。

 「ハチ」に対する感謝と償いの思いは祖父が生涯をかけても語り尽くせないほど深いものであったと思います。

 戦後80年、祖父が亡くなって32年が経ちますが改めて祖父の存在を大きく感じています。

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